ピアノ調律の作業時間について
2023/12/15
調律に関してよくたずねられる質問に「調律の所要時間」があります。ピアノは定期的に調律されるべきものなので、定期的に調律に訪れているお宅のピアノであれば、ある程度、調律作業にかかる時間はわかります。このようなケースなら、
「だいたいいつもどおり」
と言えます。
しかし、たとえば初めて調律するピアノの場合はどうでしょう。この場合は、
「まったくわかりません」
調律したことのあるピアノであれば、その状態は把握しているので、ある程度はっきりしたことが言えます。しかし、初めてのピアノの場合は、そのピアノの状態次第としか言えないのです。
たとえば、大きく音程が狂ってしまっているピアノは、時間をかけて整音・整調する必要があります。定期的に、しっかりと調律が行われてきたピアノなら、初めての場合でもそれほど調律に時間はかかりません。
というのも最近、定期的に調律が行われていなかったピアノの調律依頼が増えているのです。親が子供にピアノを習わせる際に、実家に置いてあった親自身が演奏していたピアノを、子供のために現在の家に運び入れる家庭が増えています。
当然、こういうピアノは長期間にわたりメンテナンスされていません。長期間にわたりメンテナンスされていないピアノを本来の状態に戻すには、どうしても十分な作業時間が必要になります。もしも、このような形でお子様にピアノを弾かせたいのであれば、放置せずに、少なくとも1年に1回、調律しておくべきです。繰り返しますが、定期的に調律されているピアノなら、比較的短い作業時間で本来の状態に戻せます。
ピアノは環境の変化にとても敏感な楽器ですから、実家から現在の家に運び入れるだけでもバランスは崩れます。湿気の多い環境からドライな環境にピアノを移動させる、またその逆のケースでもピアノは大きく影響を受けます。環境の急激な変化に、ピアノがついていけないために、音程や音色が安定しないのです。もちろん、調律を担当する楽器店や調律師にもスタイルがあります。時間をかければもっとよくできる場合でも、切り上げてしまう調律師もいます。時間をかけられる限り、ベストな状態になるまで作業する調律師もいます。結局、調律は「どのくらいの時間で終わる」とは言えない作業なのです。限られた時間内で作業をするとなると、どこかに必ず「妥協」が生まれてしまいます。調律にかかる時間は、そのピアノの状態次第としか言えないのです